親の家を相続したら。最初にやること3つと、ふたつの期限

「実家のこと、何から手をつければいいのか分からない」。
親を見送ったあと、そのままになっている——この記事は、そんなあなたに向けて書いています。

売るかどうかは、今日決めなくて大丈夫です。
まだ手続きが始まったばかりの方も、これから相続する方も読める内容です。
先に知っておくべきことは、実はふたつだけ。「手をつける順番」と「期限」です。
この記事はその2つを、むずかしい言葉を使わずに説明します。

結論:最初にやることは3つ。この順番で

  1. 家の書類と鍵を集める
  2. 名義変更の準備を始める
  3. 家のいまの価値をざっくり知る

1. 家の書類と鍵を集める

探すのは3つです。
家の権利に関する書類(「権利証」などと呼ばれる紙)。
毎年春に届く固定資産税の納付書。そして家の鍵です。
納付書には、家と土地の情報がまとまっています。この先の手続きすべてで役に立ちます。
あわせて、遺言書がないかも確認してください。あるかないかで、この先の進め方が変わります。
どれも見つからなくても手続きは進められるので、「まず探してみる」で十分です。

ひとつ、先に言っておきたいことがあります。
仏壇やアルバム、家の中の荷物は、今すぐ片付けなくて大丈夫です。
「片付けてから考えよう」と思うと、そこで何年も止まってしまう方が多いのです。
片付けは、方針が決まってからで間に合います。

2. 名義変更の準備を始める

家の名義を、親からあなた(たち)に変えます。
これを相続登記といいます(=家の持ち主を、国の記録に登録し直す手続き)。
2024年から義務になりました。期限は、相続を知った日から3年以内です。
放っておくと、10万円以下のお金の支払いを求められることがあります。
頼む相手は司法書士(=登記を代行してくれる専門家)で、費用は10万〜15万円ほどが目安です。
自分で申請することもできます。
「誰の名義にするか」は兄弟との話し合いとセットです。あとの章で説明します。

3. 家のいまの価値をざっくり知る

この段階では、正確な金額はいりません。
「300万円で売れる家」なのか「50万円の家」なのかで、取れる選択肢がまるで変わるからです。
まずはケタを知る。それだけで、この先の話がぜんぶ具体的になります。

家の今の価値を知っておくと、家族との話し合いも進めやすくなります。
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ふたつの期限を、カレンダーに入れる

覚える期限はふたつだけです。起点はどちらも「親が亡くなった日」です。

いつまで やること 過ぎるとどうなるか
3年以内 名義変更(相続登記) 10万円以下の支払いを求められることがある
3年たった年の年末まで(亡くなった月により3年〜約4年) 特別控除を使った売却の完了 税金が数百万円増えることがある

ふたつめの控除は、3,000万円特別控除と呼ばれる制度です
(=家を売って利益が出たとき、その利益から最大3,000万円まで差し引ける仕組み)。
使えるかどうかで、手元に残るお金が数百万円単位で変わることがあります。
主な条件は「親がひとりで住んでいた家」「1981年5月末までに建った家」などです。
期限は正式には「亡くなった日から3年が過ぎた年の12月31日」です。
残り時間は亡くなった月によって3年〜約4年と変わります。
家の売却には半年から1年かかることも多いので、使うなら早めに動き始めるのが安全です。

なお、これから相続する方でひとつだけ。
借金が多いなどの理由で受け継ぎたくない場合は、相続放棄という道もあります
(=家も預金も、すべて受け継がないと決める手続き)。
こちらの期限は、相続を知った日から3ヶ月以内ととても短いです。
迷っている場合は、この3ヶ月だけは先に意識してください。

兄弟との話し合いは「誰が管理するか」から始める

「家の話をすると、必ず昔の話になる」。
兄弟との話し合いがいちばん気が重い、という声はとても多いです。
気が重いのは、あなたの家族が特別こじれているからではありません。
何を決めればいいかが見えないまま話すから、話が過去に流れるのです。

意外に思うかもしれませんが、実家は「取り合い」になることは多くありません。
実際に多いのは「押し付け合い」です。
草刈り、換気、郵便物、見回り。誰かが黙って担い、その負担が積もって関係がこじれます。

だから最初に決めるのは「分け方」ではなく、次の3つです。

  1. 当面の管理を、誰が・何を・年に何回やるか。交通費と手間も数字にして共有する
  2. いつまでに方針を決めるか。上のふたつの期限を、兄弟全員で共有する
  3. 名義を誰にするか。「とりあえず全員の共有名義」は、売るとき全員の同意が必要になり、あとで動きにくくなりがちです

もうひとつ。話し合いには「第三者の数字」を1枚持っていくことをおすすめします。
あなたが「300万円くらいだと思う」と言うと、安く見積もっていると疑われることがあります。
自分以外が出した数字なら、その疑いから話を切り離せます。

兄弟に見せられる数字がひとつあると、話は前に進みます。
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出口は5つ。売るだけが正解ではありません

出口 お金の目安 向いている人
売る 手数料は売れた額の約3%+6万円 使う予定がない。現金に換えて分けたい
貸す 先に修繕費が数十万〜数百万円かかることも 立地がよく、手放したくはない
解体して更地にする 木造でおよそ100万〜200万円 建物が傷んでいて、土地には価値がある
無償で手放す ほぼ0円〜(手続き費用は別) 買い手がつかない。維持をやめたい
持ち続ける 税金など年数万円+見回りの手間 まだ決められない。それも選択肢のひとつ

補足を3つだけ。
解体して更地にすると、土地の税金が上がることが多い点は知っておいてください。
無償で手放す方法には、自治体の空き家バンクや、国の引き取り制度(条件と負担金あり)などがあります。
そして「持ち続ける」を選ぶ場合も、ふたつの期限だけは守ってください。
名義変更は持ち続ける場合でも義務ですし、控除の期限が過ぎると「やっぱり売る」となったときに損をします。

どの出口が合うかは、家の価値と場所しだいで変わります。
最初の3つに「価値をざっくり知る」を入れたのは、そのためです。

そして、まだ決められなくても、自分を責めないでください。
実家のことが先送りになるのには、理由があります。
仕事や自分の家庭で手一杯で、家は遠く、相談できる相手も見当たらない。
その状態で大きな決断を急ぐ必要はありません。
決めるのはあとでいい。ただ、期限と選択肢だけは手元に置いておく。
この記事でやりたかったのは、それだけです。

今日できる一歩

今日やることは、ひとつだけです。
親が亡くなった日を確認して、ふたつの期限をスマホのカレンダーに入れてください。
「3年後=名義変更」と「3年たった年の年末=控除」の2件です。
これだけで、「期限を知らずに損をする」ことはなくなります。
売るかどうかは、それから落ち着いて考えれば間に合います。

考える材料として、家のいまの価値をひとつ持っておきませんか。

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